ステーキマイスターの北川ユウジです。

 

あなたにご質問があります。

 

和牛の良い肉とはどんな肉が
最高級として認められている
思いますか?

 

サシと呼ばれる霜降りの肉を
最高級の牛肉と思われた方が
殆どだと思います。

 

これはあくまでも一般論ですが、
国内で和牛の数の9割以上を
霜降り肉として有名な黒毛和牛
占めています。

 

つまり良い和牛(黒毛和牛)の肉とは
黒毛和牛の脂と肉の美味しさを
追求した肉が最高級の肉ということに
なりますよね。

 

和牛を調べるとわかりますが
多くの方は「銘柄牛=最高級」
と思われている方が多いようです。

 

こんな経験はありませんか?

 

産地が有名だから良い肉と
決めつけてしまい。

 

飲食店のメニューに入れようとして
注文して召し上がられたお客様に

 

『こんな脂っこい和牛は食べられない』

『肉の量が多すぎる、少しだけでいい』

 

このように感じるお客様は思いの外
多いです。

 

なぜでしょう。

 

それは黒毛和牛がしつこい脂で
味のない肉なのではなく
肉になる前の「育て方」「飼料」
問題があります。

 

これからご紹介する名人会の方々が育てる
黒毛和牛は間違いなく国内でも最高級で
最高の品質の肉だと言えます。

 

このページでは、最高級の和牛を育てる
名人たちの集まりに潜入取材した話と、
和牛肉の美味しさの秘密について
解説します。

 

最高級の和牛は名人たちがいないと育たない

日本全国には
「和牛を育てたら右に出る人はいない」
名人と呼ばれる農家の方がいます。

 

しかし、その名人が牛に与える飼料が
牛の状態を目視して長年の勘を頼りに
育てるやり方でした。

 

その育て方をしていると
良い黒毛和牛を育てられるのは
本人だけです。

 

だから、名人が引退などをして
他の人が育てることになると
以前のような、素晴らしい和牛肉には
ならないので、和牛業界のレベルの
差が開くばかりになってしまいます。

 

日本は現在。

 

畜産農家の方の数が
年々減少している業界です。

 

できれば、和牛を育てる名人のやり方を
伝承して名人が育てた和牛と同レベルまで
にできれば畜産農家を志す方が
増えていきます。

 

そんな思いから、これからご紹介する
名人和牛が誕生をすることになります。

 

和牛といえば黒毛和牛

和牛を育てる業界の中で和牛といえば
「黒毛和牛」と呼んでも良いくらい
メジャーな和牛です。

 

だから、他の和牛(あか牛、短角牛)
などと比べて品種の改良が進んで
います。

 

黒毛和牛の最大の特徴であるサシは
他の和牛にはない独特な肉ですが
全ては改良により賜物です。

 

この脂に関しては賛否両論が
ありますが、この後で出てくる
名人和牛という“刻印”が押されている
牛肉は脂のレベルを別次元の味わい
にすることに成功しています。

 

最高級の和牛は飼料にもこだわっている

牛は生きています。

 

生きているからにはエサを食べます。

 

しかし、黒毛和牛のエサ(飼料)は
同じではありません。

 

実際は牛を飼育されている方の判断で
独自の飼料を作り牛に与えて育てています。

あなたも経験があるかと思うんですが
同じ和牛でA4ランクの肉を食べて
美味しいと思っていたのに。

 

今回は同じランクの肉なのに
美味しくないと思ったことは
ありませんか?

 

もしあなたが料理人で
お店で調理をするときに。

 

以前は、冷蔵庫から出したら
常温で脂が溶けてしまったけど
今回届いた同じA5ランクの黒毛和牛は
脂が溶けるどころか真っ白で固い状態…。

 

肉をカットする時も脂が固すぎて
包丁が入らない…。

 

こんな肉に当たったことがあると
思います。

 

肉に味がない、脂の質が前に届いた肉と
比べて違う原因は牛に与える
飼料の質によるところの影響が
大きいのです。

 

例えば、人間にたとえて話すと。

 

カップラーメンばかり食べている人と
健康的な食事を心がけている人では
顔色が違いますよね。

 

パワーが違うとか元気が出るなど
表現をする方もいると思います。

 

食事に気を使い、良いものを口に
入れていれば、病気にもなりづらい
健康的な体になると思います。

 

牛も同じなんです。

 

A5ランクの和牛を育てている農家さんの
飼料を見ると、全てではないですが
中にはランクの低いエサを与えて
サシを無理やり入れるような育て方
している方もいらっしゃいます。

 

上手く格付けの最高ランクのA5に
入ればいいかもしれません。

 

しかし。

 

見た目には肉にサシが入っていても
必ずしも食べて美味しいという肉
にはならないですし問題は脂の質です。

 

真っ白で硬く、口どけの悪い脂
黒毛和牛肉になってしまいます。

 

最高級の和牛を育てている名人は
牛にあげる飼料にも気を使って
います。

牛の飼料の一つであるトウモロコシでも
人間が食べて美味しいと思えるモノを
飼料としています。

 

人間が食べて美味しい飼料をあげているから
その飼料を食べて育った和牛の肉が
まずい理由なんてどこにもありません。

 

このように、必ず格付け等級だけで
全てが決まる分けではないということを
調理する側はもちろん。

 

食べる側も知っておいたほうがいい
と思います。

 

一般人が知ることがなかった和牛の裏事情

近年。「畜産を志す方が減る一方」
という話を冒頭でしました。

 

調理する側や食べる側は想像が
つかないかもしれませんが
和牛を育てて、それを“生業”にするには
かなりの努力と覚悟が必要です。

 

2019年の和牛の事情を少し
説明をすると…。

 

飼育農家のによって黒毛和牛の
子牛が子牛市場に出てきます。

 

肥育農家の方はその子牛を購入して
約2年間に渡り育てていくことになります。

 

以前は子牛の仕入れ値が今ほど
高値ではないので、畜産農家を行なっても
生業にしやすかったのですが、
現在は今までにないレベルで
子牛の価格が急騰しています。

どの商売でも言えることですが
仕入れたものが高ければ
売値もあげて販売しなければ
商売は成り立ちません。

 

和牛も同じです。

 

子牛の価格高騰によって仕入れが
圧迫して、普通に牛を育てただけでは
農家さんが生活ができないレベルに
なっています。

 

黒毛和牛の子牛だけの問題だけではなく
全ての国内で飼育されている子牛が
以前よりも高値になっています。

 

これでは、日本が誇る和牛文化
消滅の危機を迎える日が来るのも
遠い未来ではなくなります。

 

そんな事情を見て、和牛を商売として
成り立たせるために立ち上がった
方々がいます。

 

最高級の和牛は名人和牛から生まれる世の中にしたい

今回、取材にご協力いただいた
茨城県畜産農業協同組合連合会

「茨畜産パイロットファーム」

鉾田牧場長:中川徹氏

古平牧場長:菅田衆一氏

 

「名人和牛」について
色々なお話をお伺いしました。

中川氏は名人和牛を作った創立者です。

 

名人和牛とは

「全国の名人と言われる人が作った飼料を
誰が使っても名人と同じレベルの和牛を
育てることができる」

 

和牛肥育業界に革命を起こした方達です。

 

名人和牛のコンセプトは複雑な餌やりの作業の
効率化、そして飼料の質を追求して最高品質の
黒毛和牛を育てることにあります。

 

そして、最大の特徴は飼料です。

 

興味のある肉好きな方は
動画をご覧いただくと分かると思います。

和牛を育てる名人と同じ配合になっていること
そして和牛名人にあう素牛(子牛)を
名人会で見つけてきて、それを提供しています。

 

近年の子牛の高値では継続していけないと
考えて試験的に子牛を産めるような
環境も整備しています。

牧場

放牧

 

 

さらに、牛の飼い方や餌やりのやり方など
最高級の和牛に育てるためのノウハウも
惜しみなく全てパッケージ化をしています。

 

日本全国に名人和牛を育てる「名人会」
という会を作っています。

全ては、和牛を飼育する農家の方が
商売として成り立たせて日本の文化である
和牛を残していきたい。

 

そんな想いのもと活動をしている会です。

 

和牛農家を救う魔法の飼料の開発

名人和牛の最大のキモは肥育するときの
飼料にあります。

 

世の中は放牧牛がいい、とか
言われていますが、食用とする牛は
放牧だけしても美味しい肉にはなりません。

 

それに脂がない肉は火を通した時に
パサパサした食感で固くなり
味気のない肉になります。

 

調理をする側が、脂がない肉などの特徴を
事前に把握して、扱いかたを熟知していれば
上手に料理にすることができるかもしれません。

 

しかし、一般的に言われる最高の肉の条件は
適度な脂と肉の柔らかさです。

 

和牛の肥育とは肉に脂を入れる大事な
育て方の一部、だと言えるのです。

美味しい最高級の和牛肉にするためには
飼料も名人と同じレベルにしなければ
なりません。

 

そこで、中川氏はご自身で経営をされている
茨城県鉾田にある牧場を名人和牛を生み出す
「テスト牧場」として飼料作りに
奮闘することになります。

 

中川氏は飼料の開発にあたり。

 

日本全国に点在する名人と呼ばれる農家の方を
訪れて飼料を見せてもらい、それを持ち帰って
中身を分析を手作業でしたそうです。

 

時にはピンセットを用いて一つ一つ丹念に調べ
ついに名人と呼ばれる飼料の「一貫した配合」
を見つけるに至っています。

 

構想から名人和牛の飼料が完成するまで
5年間かかり、さらに牛に資料を与えて名人が育てる
牛に匹敵するまでなるまで10年間あまり掛かり
完成させています。

 

中川氏が一番気をつけたことは複雑な飼料ではなく
誰があげても同じような牛になる良い飼料です。

 

通常、和牛の肥育は前期、中期、後期と
それぞれ別の飼料を与えるのが一般的です。

 

名人和牛は「これ一本」で全て賄えるという
農家さんにとっては嬉しい飼料のようです。

 

さらに、名人和牛の飼料を全国に展開するために
雪印種苗株式会社に協力してもらい。

 

茨城県だけでなく東は北海道、西は九州地方まで
名人和牛の飼料によって農家さんの生活が
安定するようになりました。

 

徹底した黒毛和牛の健康管理

名人和牛は飼料だけ与えれば良い
というものではありません。

 

徹底した黒毛和牛の健康管理にも
気を使っています。

 

前述しましたが、質の良い飼料を牛に
与えなければ最高級の和牛は
生まれません。

 

テスト牧場である鉾田牧場では
和牛にストレスを与えないように
健康状態を見ながら飼料を
あげています。

 

開発した飼料は一袋の場合
内容量は20キロです。

 

和牛は1日に10キロの飼料を食べます。

 

ですので、この飼料は一袋だと1頭の和牛の
2日分いうことになります。

 

鉾田牧場では飼料の与えかたを
専用のパネルによって管理をしています。

常に健康状態を見ながら牛が
最高の状態になるようにしています。

 

このパネルは枝肉になった時に
大事な資料となり、出来が良い最高の
肉になると他の名人和牛会の仲間に
シェアをしています。

 

こうした細かい努力の積み重ねが
最高品質の和牛肉に
なっているのですね。

 

最高級の和牛の誕生

最高級の和牛は特殊な飼料と
徹底した健康管理、栄養管理など
があって初めて誕生します。

 

しかし、和牛の肉も10年周期で
食べ手や調理する人の好みが
変わっていくものです。

 

いつも、最高品質を保ちつつ
時代にあった柔軟な体制は
名人ならではと感じます。

 

そのために、情報収集や
研究は常にして少しでも
今のニーズを吸い上げようと
する努力は素晴らしいと
感じました。

 

銘柄牛よりも食べて美味しい和牛を目指す

食べ手やその肉を調理して提供する側にとって
一番の関心ごとは銘柄だと思います。

 

例えば。

仙台牛という名前があれば
『この和牛肉は最高級で最高の品質だ!』

 

このように思っている方は多いです。

 

しかし。

 

銘柄和牛の名前だけで和牛を
評価するのは危険すぎます。

 

なぜなら。

 

銘柄和牛ほどいい加減な決め方は
ありません。

 

あなたも経験があると思いますが
松坂牛を注文して全ての松坂牛が
サシが多いわけではありません。

 

それに、全ての松坂牛の肉の味が
旨みを含んで美味しいとは限らないです。

 

時には、脂がしつこすぎて「すき焼き」
を食べても2切れ食べたら
お腹いっぱいになったり…。

 

ステーキにする時。

 

いつも通り焼いたのに火が入りすぎて
カスカスの肉になった。

 

肉を焼いてみたら固すぎて
食べれなかった。

 

・・・・・など

 

このような事は普通に経験していると
思います。

 

これを牛の個体差だけで
片付けてしまうのは
少し違うと思いませんか?

 

この後、セリについて触れますが
和牛の格付けは人間が目視で行います。

 

肉の断面を見ただけの判断で
A4とかA5になっているだけ
なのです。

 

名人和牛では飼料や飼い方などを
変えているので、普通にA3〜A5の
和牛がランクされます。

 

しかし。

 

問題は肉の味の方です。

 

牛は飼料次第で肉に味が乗るか乗らないか
はすでに書いたと思いますが、名人和牛は
A3であってもA5であっても肉の味わいは
同じように旨みを含んだ肉になります。

 

全国に広がる和牛を育てる名人達

茨城県から広がった名人和牛は
今や、その品質や牧場の経営状況が
よくなるのを聞きつけた農家の方が
名人を使いたいという言われることが
あるようです。

変な宣伝は一切していないのに
口コミで増えているのは
素晴らしいことだと思います。

 

中には名人の飼料を使いながら
名人和牛とは名前を出さずに
銘柄牛の名前でセリに出荷している
農家の方もいらっしゃるようです。

 

彼らのことを「隠れ名人」
呼ぶそうです。

 

隠れ名人の農家さんの数はとても多く。

 

名人会では把握ができないくらい
今では多くの肥育農家の方にとって
無くてはならない飼料にまで
成長しています。

 

口コミで全国に広がっているので
もしかして、あなたのお店で使っている
和牛は名人和牛の可能性が高いです。

 

後編に続く